ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

リング2

たか厨@けんじけんです。
今回のお題は、映画『リング2』です。

原作:鈴木光司
製作:一瀬隆重、石原真
監督:中田秀夫
脚本:高橋洋
撮影:山本英夫
サウンド・エフェクト:柴崎憲治
出演:中谷美紀、佐藤仁美、深田恭子松嶋菜々子真田広之、柳ユーレイ、小日向文世
上映時間:95分
公開日:1999年1月23日

最初に、筆者が今回のブログのお題に、本作を取り上げた私的な理由をば。
前々回のブログで、レグルスさんがオススメの曲として、『リング2〜TRAILER〜』を取り上げたのを読んで、「そういえば、『リング2』ってサントラは、それなりに聴き込んでいるけれど、本編はまともに観た記憶がないなー」ということに気がつきまして。しかも丁度、そのタイミングで、CSで本作が放送という偶然が……。
これはもう「神様が……いや貞子が(苦笑)本作について書け!! と言っているんだなー」と思いこみ、筆をとってみた次第です。
 
さて本作を観た感想。世間で言われている程、つまらなくはなかったですが、映画としては、ストーリーがひたすら迷走して、あさっての方向へ行っちゃっているなと。
中田監督はプロとして、迷走を極めた脚本を、きっちりそのまま撮り切り、川井さんも監督の音楽的パートナーとして、職人に徹し、仕事をやり切ったなという印象です。

前作『リング('98)』は、「きっと来る〜♪」という主題歌が一人歩きしてしまった感がありますが、映画音楽的にもかなりのエポック・メイキングな作品だったと思います。
インタビューで前作の音楽について問われた川井さんは「映像を最初に見て感じた、ジメッとした和の感じを音でできないか?」というアプローチで作曲したと語っていますが、これまで誰も聴いたことのないホラー映画の音楽を作り上げ、その後のJホラー映画の音楽に多大な影響を与えたと筆者は見ています。
特に、貞子がテレビ画面から這い出してくる、最恐のクライマックス・シーンに付けられた、圧迫感すらある音楽が、観客の多くを恐怖のどん底に突き落としたのは、もはや伝説と言っていいでしょう。

「続編である本作は、前作の音楽をどのくらい継承しているんだろう?」と思いながら鑑賞したのですが、あまり前作との音楽的な繋がりは感じませんでした。本作はホラー映画のはずなのに、前作と比べて、あまり怖くないので(苦笑)、恐らく前作の音楽を継承、発展させた曲を画面に乗せようとしても、合わなかったんだと思います。
本作に貞子は出るには出ますが、出来の悪い泥人形として、こけおどし的に登場するだけで、前作のような映画全体を牽引するような恐怖の象徴たりえていません。
そんな怖くない貞子に、前作のような、音の隅々から恐怖が滴るが如き音楽を付けても過剰なだけで、コントみたいになったでしょう。ですから前作にこだわらない音楽設計にしたのは正解かと。

他に音楽について気づいたのは、「ブリッジ的な短い曲が多い」ということですね。曲が始まっても20秒も経たずに終わってしまうので、川井ファンとしては「あらら……」というパターンが多かったです。こういう短い曲のほとんどはサントラに未収録の運命を辿ってしまいますから残念です。
ピアノ好きの筆者的には、精神病棟の廊下で、何故か控えめな音量で流れる(病棟内のBGMという現実音設定?)、倦怠した空気の中をゆらゆらと漂うような雰囲気の少し明るめのピアノ曲が、短いながら気に入りました。サントラでは『水底の呻吟』の中にピースとして組み込まれています。  
舞と陽一が、貞子の住んでいた島へ船で旅立つ時のシンセを絡めたメロディアスな曲も印象に残りました。まっ、この曲も短いんですが(苦笑)
前作は、不条理な恐怖を体現するようなノイズ系の曲が多かったのですが、本作ではそういう曲は控えめな印象です。代わりに明確なメロディを持った曲が多いので、サントラ単体としてなら、前作のサントラより聴き易いですね。

とかくヒット映画の続編作りは難しいと言われますが、本作は「何故、前作があれ程、支持されたのか」の分析を完全に見誤った作品です。職人と言われる川井さんでも作曲には、相当、苦心されたのではないでしょうか。
本作の撮影を終えた後、シリーズの更なる新作『リング0 バースディ('00)』の演出を打診された中田監督は「ホラーはもうイヤです」とこれを断り、念願だった映画企画に着手します。
その映画のタイトルは『ガラスの脳('00)』。
この映画で中田監督は川井さんとのパートナー関係はそのままに、『リング』シリーズとは打って変わって、素晴らしく甘く切ないメロディを、聴かせてくれるのですが、それはまた別の話。

【蛇足】
中田監督は、その後、本人の好むと好まざるとに関わらず、ホラー映画の旗手として注目を浴び、ハリウッドに招かれます。そこで撮ったのが、『らせん('98)』『リング2』に並ぶ『リング』第3の続編とも言える『ザ・リング2('05)』です。
キネマ旬報』に映画音楽評論家の賀来タクト氏が書いた記事によれば、「中田監督は『ザ・リング2』の音楽担当に、盟友・川井憲次を強く希望したが、諸般の事情で実現しなかった」とありました(その辺の事情は中田監督の『ハリウッド監督学入門('09)』で垣間見えるかも……)。結局、『ザ・リング2』の音楽は、ヘニング・ローナーとマーティン・ティルマンという「誰それ?(オイ)」な2人が担当しました。
「世が世なら川井さんが担当していたかも……」という興味から、筆者は『ザ・リング2』も観てみました。
リング2』とは違って、「呪いのビデオを巡る物語のその後」を正面から描いていて、筆者は『リング2』よりは好感が持てましたかね。
惜しむらくは、やはり「ああ、川井さんの音楽で観たかったなぁ〜(苦笑)」と。
まぁ、かなわぬ夢なんですが。