ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

仄暗い水の底から

連日猛暑でうだっております。ガチョピンです。今年は例年より早く梅雨明け宣言されましたが、今回はジメッとした季節の作品の紹介です。

仄暗い水の底から
監督:中田秀夫
原作:鈴木光司『浮遊する水』
プロデューサー:一瀬隆重
脚本:中村義洋、鈴木謙一
サウンド・エフェクト:柴崎憲治
主題歌:青空(歌:スガシカオ
制作プロダクション:オズ
キャスト:黒木瞳小日向文世水川あさみ菅野莉央(子役)、小口美澪、小木茂光徳井優
配給 東宝
上映時間 101分
公開 2002年1月19日

 中田監督11本目の作品、川井さんとの映画作品では6本目です。
クロユリ団地』を思わせるような団地が舞台。
 サントラが出ており、作品世界を音楽で体験することが出来ます。しかし、このサントラ、楽しみにしている川井さんの解説などはなく、ちょっと物足りない気持ちです。全13曲収録で、川井さんの手掛けた楽曲12曲と、スガシカオさんの主題歌が入っています。
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 冒頭、ウォーターフォンを逆さにして、バイオリンの弓でこする、あのイヤーな感じの音から始まる『深き淵より』でスタート。ホラー映画の冒頭らしい、「何かこれから起きようとしているぞ」と不安になるような曲です。金属系の反響音が多い構成です。

 2曲目の『兆し』、3曲目の『小さな人影』は本編ではコマ切れに使用されています。通して聴いても、こま切れで聴いてみても、「不気味な感じしかしない」印象です。
 本編を見ながらぼんやり聴いているとサウンド・エフェクトの効果なのか川井さんの曲なのか判然とせず、私は何回も聞きなおしました。
 
 4曲目の『憧れ』は、主人公である母と幼い娘がモチーフのやさ優しい曲。この曲だけ聞くと、「ホラー映画の曲なの?」と思うような優しさがあります。
 6曲目の『交錯』も、ちらりと暗い印象が入りつつも、穏やかな曲です。
 この2曲はホラーが苦手な方でも、聞きやすいかな、と思います。
 なお、『憧れ』の一部はサントラ12曲目『覚醒』にもモチーフとして使用されています。
 9曲目の『喚き』は、焦燥感、重く不安にさいなまれた心情をよく表しています。この手の曲は、映像と一体化してしまうことが多く、もしサントラで曲単体を聴いてなければ、楽曲なのか、サウンド・エフェクトなのか、判断が難しいところです。でも、「この場の人物の心情とシンクロしている」感は、さすがです。
 12曲目『覚醒』はラストを飾った楽曲です。母親=女性らしいフレーズも聴こえてくる曲で、本作がホラー映画なのにどこか優しい印象をも併せ持つ、後味の悪くない作品になっているのは、この曲の功績が大きいでしょう。

「都市生活者における恐怖を表現したかった」という監督の意図の通り、環境音に似た無機質な音作りによる「都会的」な印象が反映された音楽だと思います。
 家探しから、仕事探し、離婚調停に追われ、せっかく入居した住居に訪れる恐怖にさいなまれる母親……。その心情をヒステリックかつ、焦燥感、恐怖感にあふれるように、音楽で表現されています。
「心情を表現するには音楽が最適だなー」と痛感しました。どうしても日本映画はセリフに頼りがちになる傾向がありますが、恐怖というセリフにしにくい感情の表現に、川井さんの音楽を持ってきたのは大勝利! と思います。

 恐怖という「語りえぬもの」を映像であらわし、音楽でより味付けをする。この映画を観ながら考えたことです。
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映画「仄暗い水の底から」サウンドトラック

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