ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

怪談

 ガチョピンです。
 寒い。寒いです。気温が低く、雨は雪に変わりそうな今日この頃ですが、雪の情景から始まる作品の紹介です。

『怪談』
監督:中田秀夫
脚本:奥寺佐渡
原作:三遊亭円朝 『真景累ヶ淵
製作:一瀬隆重
製作総指揮:迫本淳一
出演者:尾上菊之助黒木瞳井上真央麻生久美子
美術監督種田陽平
音楽プロデューサー:慶田次徳
主題歌:浜崎あゆみ『fated』
配給:松竹
公開:2007年8月4日
上映時間:119分

 中田作品としては初めての時代劇。
 中田監督14本目の作品、川井さんとの映画作品では7本目です。
 原作は三遊亭圓朝の落語『真景累ヶ淵』。1859年(安政6年)初演。およそ150年ほどに出来たお話。文明開化の折の話なので、原作は「時代錯誤感」もかなりあります。

 「因果応報」が原作のテーマですが、映画については中田監督曰く、「愛って怖い」ということだそうです。(DVD特典ディスクのインタビューより)
 http://www.amazon.co.jp/DVDAB/dp/B000Z1BZJE/

 古典とは思えないほど現代にも通じる情の深さを感じさせる脚本です(『おおかみこどもの雨と雪』の方です) 。

 
 例に洩れず、「非常に(画面から漂ってくるものが)ウエットな」「女優さんが美しい」(川井さんコメントより 『アイジョッキー文庫 川井憲次のオールタイムニッポン』 1:38頃)中田映画に則った作品です。 
 https://itunes.apple.com/jp/audiobook/ijockey-chuan-jing-xian-cino/id278977885
 サントラは、全般的に重い雰囲気の曲群で構成されています。

 サントラ1曲目、『怪談の始まり』はおどろおどろしい導入でフルート(?)の旋律が、首筋にぞっと絡みつきます。太鼓が和な雰囲気をかもし出しております。
 鈴(りん)を思わせるトライアングル(?)の音色も、涼やかな恐怖を引き立てます。
 洋風な楽器でも和の雰囲気って出せるんですね。
 サントラ8曲目、『豊志賀の死』では、尺八(?)の「ぼおー」という音色から、切り裂くような金属音、太鼓の刻むリズムで、よりいっそうホラーな心情を盛り立てています。
「夜トイレに行けなくなること請け合い」とはまた違う(?)怖さです。「己の業の深さ」「罪の意識による恐怖」は、中田ホラーの新たな一面として読み取れ、興味深いです。
 それにしても、この映画、短い時間で「因果の巡り杉……」「人、死に杉……」な展開です。 長ーい原作を思うと、2時間弱で、まとまりよく見せるため仕方がなかったかな、とも思います。
 同時期の『ひぐらしのなく頃に解』チックな音の使い方もありますが、底流に流れる雰囲気が似通っているので、さもありなん。(『ひぐらし』のコミカル側面曲は抜きで)
 エンディングロールが川井音楽でないのがいちばん悔やまれるところです。もっと、余韻の残る、美しい音楽が欲しかった……!!!
 

 思いっきり余談:私事ですが、原作は辞書片手に通勤電車で、5週間掛けて読了(えらい遅読)。最後は自宅でイッキ読み。この面白さ、最近の小説にはありませぬ。圓朝作のほか2作も続けて読みました。「思いっきり本を読んだ!」と感じられる一冊です。いずれ全集も制覇したい……。 
 と思ってたら、38年ぶりに『円朝全集』が岩波書店より刊行されます。挿絵も多数収録され、今回の全集で初収録の作品もあります。
  http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/092741+/index.html
  近代文学として、非常にエポックメイキングな作品でもあり、文化遺産です。著作権切れなので、一部の作品は青空文庫などでも読めます。
 このような素晴らしい作品にめぐり会えたのも、すべては川井さんのおかげです。時代劇はあまり好まない私なので、川井さんが担当しなかったら、まず手に取らない作品でした。「ここで会ったも何かの縁」。落語とは、縁とは、こういうものなのでしょう。
 ああ、円朝の作品を読みながら、川井さんの曲に浸っていたい……。
 

《了》