ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

作品紹介『劇場霊』

たか厨@けんじけんです。
今回のお題は、現在公開中のホラー映画『劇場霊』です。

企画:秋元康
監督:中田秀夫
脚本:加藤淳也、三宅隆太
撮影:林淳一郎
美術:原田恭明
音響効果:柴崎憲治
音楽編集:金貞陽一郎
出演者:島崎遥香足立梨花高田里穂、町田啓太、中村育二小市慢太郎、柳憂怜 ほか
上映時間:99分
公開日:2015年11月21日

本作では企画、監督、脚本、撮影、音響効果などで大ヒットした『クロユリ団地('13)』と同じスタッフが再集結しています。そして中田作品といえば、音楽は当然、川井さん。本作は中田&川井コンビの劇場用映画では15作目に当たります。また『女優霊('95/音楽:河村章文)』で劇場映画の監督としてデビューした中田監督の20周年を飾る作品でもあります。

本作のために川井さんが用意した楽曲は、筆者が数えた限りでは22曲でした。
舞台稽古の場面で繰り返し流されるバロック調の現実音楽だけ、川井さんの手になるものか、筆者は判断に迷いました。ただ過去の中田作品で流れた現実音楽の多くも、川井さんの作曲でしたので、このバロック調の曲も恐らくは同様であろうと判断。22曲の中に数えました。もし間違っていたら、ごめんなさい。


以降は、本作をまだご覧になっていない方にはネタバレを含む内容となります。気になる方はご注意して、「ちょうだい」


本作の恐怖の象徴は、魂の宿った球体関節人形です。精巧に人を模した人形が、人間を襲うというシュチエーション……。筆者は川井さんの過去の担当作である『イノセンス』('04)のハダリを思い出しました。同作のクライマックス、ハダリが集団で襲いかかってくるシーンは西田社中の厚みのある合唱に彩られていました。
対するに本作の人形は単体。無念の死を迎えた女性の怨念が籠っている(と推測される)代物。
その人形による恐怖、怪異を表現する音楽的手段として、川井さんは『精霊の守り人('07)』、中田監督の怪奇時代劇『怪談('07)』や『クロユリ団地』などでも組んだ岡田綾子氏のソプラノを選びました。
朗々とした岡田氏のスキャットは、人形の怪しさ、不気味さをあますことなく表現し、そこに不穏な弦の響きが加わることで、肌が粟立つような恐怖感を音楽的に現出させていました。
スキャットは人の声ですので、当然ながらナマっぽく、人の精気を吸い取ることで、段階的に人間へ近づいていく人形の生々しさに相通ずるものがあったかと。


本作の中盤までの音楽は、1分未満の曲やショックを表現する数秒単位の曲が多く、川井さんの音楽をたっぷり聴きたい向きには、やや欲求不満な音楽設計です。しかし人形が本格的に殺戮を開始する映画後半では一転、途切れなく曲が流れ続け、『一大虐殺組曲』の様相を呈しますので、川井ファン的には眼福ならぬ「耳福の嵐」な作品となります。お楽しみに。


さて本作は公開1週目で、興業成績ランキングのトップを獲った『クロユリ団地』に比べると、興行的にかなり苦戦している模様です。
クロユリ団地』は公開後にダウンロード販売ながらもサントラが発売されましたが、本作は興行的に厳しいこともあり、サントラの発売は難しいかもしれません……。
ここは是非、劇場の暗闇へ足を運んで、川井さんが新たに書き下ろした恐怖の旋律と魔性のソプラノに耳を傾けてみて下さい。


【『劇場霊』公式サイト】
http://gekijourei.jp/