ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

オススメの曲/飯田馬之介監督追悼〜『デビルマン 妖鳥死麗濡編』より『激突』


【作曲家・川井憲次の楽曲について、色々語ってみるブログ/第37回】


 たか厨@けんじけんです。 

アニメーター、アニメーション監督、コンテマン、プロデューサー、脚本家、漫画家としてマルチに活躍されていた飯田馬之介(旧名:飯田つとむ)監督が2010年11月26日、肺がんの為、永眠されました。享年49歳の若さでした。
関わられた作品としては、急逝された神田武幸監督の後を引き継いだ『機動戦士ガンダム 第08MS小隊(1996年〜99年)』の7話以降の監督が、一番有名かと思います。

 川井憲次作品では以下の作品を担当されました。

◆『デビルマン』:監督、脚本(永井豪氏と共同)
1)『誕生編(1987年)』
2)『妖鳥死麗濡編(1990年)』


◆『CBキャラ 永井豪ワールド(1990〜91年)』:監督
1)『オレは悪魔だ デビルマン!』
2)『オレは強いぞ マジンガーZ!』
3)『これが最後だ バイオレンスジャック!』


◆『リフレイン(1993年)』:監督
 ※東京都製作の薬物使用予防の為の教育映画。 


◆『おいら宇宙の探鉱夫(1994〜95年)』:原作(フォースマン・ランチフィールド名義)、監督、脚本(早坂律子氏と共同)、主題歌作詞(KAN CHAN名義)
1)『118,000ミリセコンドの悪夢』
2)『デストロイ&エクソダス

 以上の4作品です。
 この中で(ただし『リフレイン』は未見)、筆者が音楽的に強い印象を受けた作品は二つあります。
 一つは『探鉱夫』で、その中でも監督が作詞を担当された主題歌『おいら宇宙の探鉱夫節』は強烈でした。
川井さんの作・編曲で、歌い手は声優・歌手の立木文彦氏。少し懐かしさを感じさせるメロディ、『ゴジラ対へドラ』の汚染物質名を連呼する歌『かえせ!太陽を』をちょっと連想させられる歌詞「環境汚染に、酸性雨」、立木氏がシャウトするサビの「やけくそ、やけくそ、やけくそパーワー」等、一度聴いたら忘れられないインパクトがありました。



 そしてもう一つが今回取り上げる、

デビルマン 妖鳥死麗濡編』
・1990年2月25日発売
・キャラクターデザイン・作画監督小松原一男
・録音監督:千葉繁
・音楽ディレクター:大月俊倫
・声の出演:速水奨水島裕榊原良子青野武

 飯田監督の監督・脚本家デビュー作となった『デビルマン 誕生編』の続編です。『誕生編』は初監督作らしく、演出がややぎこちなく、また小松原氏が体調不良で、キャラクターデザインのみの参加となったせいか、作画も今一つで、完成度が微妙という作品でした。
 しかし2年3ヶ月ぶりに発表された本作は、主人公の強敵にシレーヌとジンメンという原作でも人気の高いキャラクターを迎え、切れのあるバトル演出とその演出に作画監督の小松原氏が良く応え、充実した作画が実現。更に前作のデビルマンのテーマ曲を継承しつつも、新たな曲想の音楽が書き下ろされ、そこに声優さんたちの好演も加わって「音の面からも」非常に完成度の高い一作となりました。

 本作の音楽で、筆者が特筆したい曲は、サントラのトラック10『激突』です。1トラックに4曲が収録されており、どれも美しき女デーモン・シレーヌデビルマンの激闘を彩った曲ですが、その中でもお薦めは3曲目と4曲目になります。
 まず1:10から始まる3曲目は最初、デビルマンのテーマが勇壮に奏でられていたのが、ピアノの音を経て1:36辺りでガラッと曲調が変わり、ワルツになります。このワルツを構成し、反復される短いモチーフが、たまらなく魅力的なのです。
 激しくもどこか女性的な旋律で、筆者は勝手に『シレーヌのテーマ』と呼んでいます。
 2:20からの4曲目は冒頭から、この三拍子のモチーフが姿を現し、繰り返されながら、徐々に激しさを増してゆく曲となっています。
 新宿の高層ビル街、旅客機の飛ぶ高空、山間部の町の上空へと目まぐるしく場所と高度を移しながら、デビルマンシレーヌが、美しくも血みどろの死闘を繰り広げる様を、この円舞曲(ワルツ)が熱く引き立てて、筆者に魂を揺さぶられる程の高揚感を与えてくれました。

 
 尚、筆者がこのワルツを最初に耳にしたのは、本作の発売告知CMにおいてであり、たちまち、僅か15秒の間に反復される短いモチーフの虜になりました。しばらくの間、脳内で件のモチーフが無限ループしたぐらいです。そして本作で実際に、このモチーフを含んだ曲が使用されているのを確認するやサントラを買いに走りました。
 以前、「最初に鮮烈に記憶に残った川井作品は『紅い眼鏡』のタイトル曲、次に衝撃を受けたのは『機動警察パトレイバー劇場版』」と書きましたが、本作は川井さんによるサード・インパクトでした。しかも致命的なまでの(苦笑)。パトレイバー劇場版』の時はまだ小さな炎だった川井さんへの関心が、本作で一挙に燃え上がり、以降、川井さんの音楽を追いかけ、散財し続けるという「修羅の道(笑)」に入ったという意味でも、本作は筆者には記念碑的作品であります。 


  最後に。
 『デビルマン』と『探鉱夫』のビデオシリーズは諸般の事情からどちらも完結を迎えることが出来ませんでした。
「もし最終巻が実現していたらラストシーンを飯田監督はどの様に描いたのか?」
「そこには川井さんのどんな音楽が乗せられたのか?」
 両作とも今更ながら完結編が制作される可能性なぞ極めて薄かったのですが、それでも飯田監督が活躍されている限りは「いつかは……」と僅かながらも勝手に希望を繋ぎ、想像する余地がファンには残されていました。
 しかしこの度の飯田監督の逝去によって、飯田&川井コンビによる両作の完結編が、あるいはそれ以外の全く新しいシリーズなり作品が実現する望みが、完全に絶たれてしまいました。それが今はひたすら残念でなりません。
 飯田監督のご冥福をお祈り致します。合掌。