ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

作品紹介『クロユリ団地』

たか厨@けんじけんです。

 今回のお題は、現在公開中のホラー映画『クロユリ団地』です。本作は、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第1位だったとか。川井さんの担当作がトップを飾ったのは、久々ではないでしょうか。まずは好調なスタート、喜ばしい限りです。

企画:秋元康
監督:中田秀夫
脚本:加藤淳也、三宅隆太
撮影:林淳一郎
美術:矢内京子
音響効果:柴崎憲治(アルカブース)
音楽編集:金貞陽一郎
出演:前田敦子成宮寛貴勝村政信西田尚美、田中奏生、手塚理美ほか
上映時間:106分
公開日:2013年3月24日(第5回沖縄国際映画祭にて先行上映)
     2013年5月18日(一般公開)

 さて本作の音楽についてですが、なんと!! 本作のプログラムには川井さんのインタビューが1ページに渡って、掲載されています。要約すると、

★監督からの提案で、ちょっと怖く感じられる童謡チックなメロディをメインテーマにした。
★今回、エンドロールの曲も担当した。ホラー映画のエンドロールで、しかもインストゥルメンタルを作った経験がほとんどなかった。

そうです! 本作のエンドロールに流れるのは、タイアップの主題歌などではなく、川井さんの手による曲なのです。これは昨今のメジャーな邦画ではかなり珍しい選択だと思います。筆者も本作の製作を知った時は「企画が秋元康氏で、主演が元AKBの前田敦子さんと来れば、エンディングには絶対、川井さんとは無関係なアイドルソングが流れるよな」と信じて疑ってませんでしたから。
実写の邦画で川井さんによるエンドロール曲が聴けるのは、2年前の『GANTZ』2部作以来ですね。
とにかく映画本編が終わっても、最後まで席を立つことなく、耳を傾けて欲しいと思います。 


公開して間もない作品ですし、これから観に行こうと考えている方の興味を削がない範囲で、では本作の音楽について語ってみます。 


本作で川井さんの音楽は「10曲以上、20曲未満」流れます……「なに、その大ざっぱな数は……?」と問われる方もいるでしょう。いや最初は「これは何曲目」とか数えているんですよ。でも画面に引き込まれて、途中で分からなくなってしまうんですね(苦笑)
それに本作はホラー映画ですから「ズォーン」とか「ドズーン」みたいなショック音みたいな音が随所に入りまして、「これは川井さんの音楽なの?」「それとも柴崎さんによる効果音なの?」と判断に困っちゃうんですよね。だから明確に何曲とは言い切れないのです。

本作の音楽で特徴的なのは、中田ホラーには珍しくメインテーマがあることでしょうか。川井さんが担当された中田ホラーには、不穏な空気感を醸し出すような音楽(川井さんいわく、和風の湿った音)が多用されてきましたが、そこにはメインテーマ的なモチーフは存在していませんでした。
しかし本作では、プログラムからの引用で前述したように、中田監督の要請により、『童謡チックなメロディ』がメインテーマとして採用されています。
最初にこの童謡メロが使用されるのは、タイトルバックです。毒々しいクロユリの花のバックに、メルヘンタッチに編曲されたリリカルなメロディが流れる映像は短いながらも、観る者の不安を誘い、相当なインパクトがあります。
このメインテーマのモチーフは要所要所に流れて、画面を引き締めます。本作のキー・キャラクターであるミノルの初登場シーンにも流れますし、具体的には、どういうシーンかは言及を避けますが、後半のクライマックス・シーンでは、このメロディが執拗にリフレインされ、恐怖感を増すのに貢献しています。
最後の最後まで、このメインテーマは効果的に映画を盛り立てていますので、注意して耳をすませてみて下さい。
 
勿論、メインテーマ以外にも、本作にはいつもの中田ホラー・テイストの曲や根源的な恐怖を誘うコーラス曲、狂ったように同じメロディが繰り返され、それが段々怖くなってくる曲など、音楽的にも聴き所満載です。
是非、皆様方には劇場で(本作は今のところ、サントラ発売の予定がありませんので)、恐怖に打ち震えて頂きたいと思います。
それでは、クロユリ団地でお会いしましょう。