ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

『デス・ルーム』

【作曲家・川井憲次の楽曲について、色々語ってみるブログ/第69回】

2006年、米国にて劇場公開
監督:ジョー・ダンテケン・ラッセル、ショーン・S・カニンガム、モンテ・ヘルマン、ジョン・ゲイター
脚本:デニス・バルトーク
出演:レイチェル・ヴェルトリ、ジェイス・バルトーク、ララ・ハリス、スコット・ローウェル、石橋凌杉本彩ほか
上映時間:105分

 たか厨@けんじけんです。
今回取り上げるのは、日米合作のオムニバス・ホラー映画の『デス・ルーム(原題・『Trapped Ashes』)です。日本では劇場未公開。2009年になって、ようやくDVDが発売された作品です。
 サントラも発売されていません。
 川井さんの作品では知名度が限りなく低いと思いますので、筆者がレンタルで観たのを機に、ここに内容を紹介する次第です。

 スタッフについて。本作はかつての有名監督を三人も……『グレムリン』のジョー・ダンテ(60歳)、『肉体の悪魔』や『白蛇伝説』のケン・ラッセル(69歳)、『13日の金曜日』第一作の監督として有名なショーン・S・カニンガム(65歳)……迎えているのですが(カッコ内の年齢は2006年当時)、皆さん、還暦を越え、正直、旬が過ぎている感は否めません。
 モンテ・ヘルマン(74歳)は過去に監督作が何本かあるものの、それよりはタランティ―ノ監督の『レザボア・ドックス』の制作総指揮を担当したことが、映画界における最大の貢献という人物。
 ジョン・ゲイター(年齢不詳)は『マトリックス』シリーズのSFXを監修した人で、どうも本編を撮るのは本作が初めてのようです。
 さてさて、この五人の監督のパワーを結集した映画、いかなることにあいなりますや。


 冒頭「ポポポポ、ポポロッポン♪」という印象的なメインテーマが流れて、本作は幕を開きます。
 ストーリーは、撮影所見学ツアーに訪れた客たち六人が、洋館の一室に閉じ込められて、脱出不能になり、「怖い話をすれば、ここから出られるかも」という老ガイドの提案に乗った客たちが、それぞれの持ちネタを語り始める……というものです。洋館の客たちの場面をダンテが演出し、客たちが語る四つの話をそれぞれの監督が担当しています。
 以下、各話のタイトルは筆者によるものです。 

 
 第一話 魔乳(監督:ケン・ラッセル
 自分が売れない女優なのは、「胸が小さいせい」と思い込んだヒロインが、怪しげな病院で豊胸手術を受けます。
 しかし手術で謎の生命体(?)を埋め込まれた彼女のバストは、吸血オッパイになってしまう!!  というトホホな内容です。ホラーにしろ、ギャグにしろ、中途半端で、オチも酷い最低の作品です。これがトップバッターという辺りで「本作には一切期待できないな」と、ある意味、覚悟完了できます。
 音楽的には、手術シーンに流れる曲が、川井さんの過去作『カオス』に似た重苦しい旋律と太鼓の曲に、『カオス』にはなかった女声コーラスをまぶすという趣向で、『カオス』の音楽が好きな筆者には、その発展形的なるものが聴けて嬉しかったです。
 

 第二話 地獄巡り(監督:ショーン・S・カニンガム)
 日本を訪れた米国人夫婦が巻き込まれる怪異譚。エロ度高めですが、肝心のシーンでアニメになる手法は、知る人ぞ知る円谷プロのプロレス・ヒーローもの『プロレスの星・アステカイザー』を彷彿とさせます。
 音楽的には、ヒロインと日本人幽霊の情事のシーンで流れる、女性コーラスが神秘的な雰囲気を漂わせていて良かったと思います。


 第三話 幻の女(監督:モンテ・ヘルマン
 数十年もの昔、若き日の主人公は、映画監督である友人(実在の監督です)の彼女を寝取ってしまう……。一時の過ちが主人公にもたらす恐怖……という線を狙ったのかなーと思いきや、特に因果応報話でもないし、というか、全然怖くないし、結局「主人公はエッチが出来て得しただけだよな」という、これまたしょーもない話です。ラストで明かされる彼女の正体もとってつけたような感じで唖然とさせられます。
 ただし全編に漂うクラシックなムードを、川井さんのジャズ風味の音楽が引き立たせています。


 第四話 回虫(監督:ジョン・ゲイター)
  双子を妊娠したと思った女性が診察を受けると、一人は確かに胎児だったものの、もう一つは回虫だった……。医師は胎児への影響を考え、虫くだしなどを使わず、回虫は放置。その後、無事、女の子が生まれますが、彼女は「自分の弟は回虫なんだ」と思い込む、ちょっと残念な娘になっちゃいます。
 その後、実母が精神を病み、継母に引き取られた女の子は、彼女との不仲に音をあげ、遂に「助けて、回虫!!」と助けを求めると……。
 川井さんのホラーでお馴染みの、地の底から響くうめき声のような不協和音も使われていますが、四本の中では一番、メロディアスな音楽が付けられています。


 四つのお話が終わり、語り手たちそれぞれにイヤ〜ンな結末が訪れて、映画は終わります。
 エンド・ロールに流れるのは、近頃のホラー映画のエンディングにありがちなアメリカン・ロックだろうと思いきや、ちゃんと川井さん作曲の音楽なので、ここだけは救われた気持ちになります(笑)。
 「ポポポポ、ポポロッポン♪」という冒頭に流れた印象的なメロディから始まって、様々なモチーフが絡んで展開していく曲です。


 最後に。ジョー・ダンテ監督と言えば、長年、作曲家ジェーリー・ゴールドスミス(1929〜2004)とコンビを組んできたことで、洋画サントラ・ファンには有名です。彼らのコンビ作で『グレムリン』のテーマ曲と言えば、誰でも一度は耳にしたことはあるのではないでしょうか? ゴールドスミスの遺作となった『ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション('03)』もダンテの監督作品でした。
 ゴールドスミスも川井さん同様、文藝からSF、ホラーと幅広いジャンルの映画を担当した作曲家でしたが、もし御大が存命だったら、ダンテのルートで、本作の様なおバカ映画のスコアの依頼が行っていたのかな〜と思うと、ゴールドスミス・ファンでもある筆者は戦慄せざるを得ません(苦笑)。まぁファンの間でも「巨匠なのに仕事を選ばない」ので定評のあった御大のこと。案外、嬉々として作曲作業にいそしんだかもしれませんけれども……。
 ゴールドスミスがやっていたかもしれない仕事を、川井さんが担当したことに、個人的には運命的なものを感じつつ、本作の音楽を興味深く聴かせて頂きました。


 尚、本作は現在、CSのムービープラスで放映中です。
 7月はあと3回、
 13日  6:00
 16日 25:15
 29日 16:00
 に放送されます。本作に興味を持たれた方で、ムービープラスが視聴可能な方は、チャンネルを合わせて耳をすませてみて下さい。映画本編はホントにどうしようもありませんが(苦笑)。


【予告編】