コラム「除夜の鐘」
ガチョピン@けんじけんです。
来たる12月31日(火)、東京ビッグサイトで開催されるコミックマーケット85に、当サークル・憲次力研究所(けんじけん)も出展します。場所は「西も36b」。新刊として、2013年の川井さんのお仕事を振り返った年鑑をご用意しました。
新刊のタイトルは『未解決クロユリ戦隊 新日本薄桜鬼〜アテルイのおいしい野望〜3D2』 です(笑)
ブースにお立ち寄りの際は、ぜひお手にとってご覧になってください。よろしくお願いいたします。
年の瀬です。というわけで、お題は「除夜の鐘」です。
「除夜の鐘」といったらこれ! と、私が思い浮かべる川井サウンドの紹介です。
「除夜の鐘度数」順にチョイスするとこんな具合です。
☆☆☆『Avalon』より『Flak Tower 22』
☆☆『イノセンス』より『煉獄』
番外『機動警察パトレイバー2 the MOVIE』より『Asia(Primitive Version,2002 REMIX)』 の3曲です。
川井さんの楽曲の特徴として、「鐘の音が印象的な曲が多い」点があります。☆をつけた2曲にはその特徴がよくあらわれていると思います。
『Flak Tower22』は、主だったメロディーが際立たず、低く重い「ゴォォォーン、ボォォォーン」という音の合間に小さめの打楽器音が響くといった曲の構成です(ライナーノーツでも、「除夜の鐘ですね、こりゃ」といった川井さん自身のコメントがあります)
『煉獄』は、ゆっくりとしたリズムで、鈍く重く分厚い感じの金属音です。2分28秒辺りからメロディーのようなものが加わりますが、低く重い感じは曲の最後まで変わりません。
『Asia(Primitive Version,2002 REMIX)』は、元曲である『Asia』のリズム部分を抜き出した構成で、「ドン、ドドンドン」と基本のリズムに小さめの銅鑼(どら)3枚の音がかぶさる曲です。除夜の鐘、とはいささか趣が異なりますが、クセになる打楽器の曲ということで御勘弁ください(私のiPodの再生回数多いんですよ〜)
映画本編を観ずにサントラだけ聴き、この3曲を聴くと「ん? サウンドエフェクトなの?」と不思議に思うのですが、本編を観て納得します。緊張感、不安感、場の雰囲気感が如実に演出され、「映画の半分は音楽」(by.押井監督)を裏付ける楽曲になっています。
登場人物の心境や場の空気感を考慮して、この曲を当てはめた川井さんに、「映像作曲家」としてのセンスが感じられました。
3作とも押井監督作品で、監督が川井さんを信頼したからこそ、こういった演出にしたのでは、という見方も出来ますが、ここでは割愛します。
監督もすごいけど、川井さんもすごいよ! としか言えません。
その他に、鐘に類似した楽器が際立つ作品として、『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』と『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』があります。
『スカイ〜』では、「編鐘」(へんしょう)という大きい楽器を用いた曲があり、主旋律の後ろで低く響いています。
『GHOST 〜』 では、大きな銅鑼(どら)を用いた曲があります。
どちらの楽器もサイズが大きいので、収録の際には「マイクの感度を上げて残響音まで収録する」ため、演奏者から生じる「衣擦れ」に細心の注意を払うそうです。
マレット(ばち)を替えてみたり、持ち方を変えてみたり、演奏に際しては、常に試行錯誤の連続で、作曲の難しさに重ねて、演奏して音を生み出す苦しみも感じられます。
川井さんはインタビューで「これでよかったのかな? という思いは常にある」旨、おっしゃられていて、そのご苦労がしのばれます。
余談ですが、台所で調理をしていて鍋と蓋がぶつかった音に「はっ! 今の音、川井さんっぽい!」と反応してしまう私です。
では皆様、去り行く2013年を川井サウンド「除夜の鐘」で締めくくってはいかがでしょうか。よい年をお迎えくださいませ。