ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

オススメの作品『暗黒神話 天の章』 

どうもタニヤンです。前回に引き続き今回もアタクシが書かせて頂きます。

暗黒神話 天の章』
1990年2月23日発売
原作:諸星大二郎
監督・脚本:安濃高志
演出:安濃高志望月智充
キャラクター・デザイン:柳田義明
作画監督:河内日出夫、柳田義明
制作:亜細亜堂
キャスト:佐々木望速水奨 ほか


前編で運命にひきずられる様にして蓼科〜熊本〜宇佐〜と遍歴した主人公・武。後編では彼がその運命に対してどう対峙するかが語られます。
今回も各曲タイトル不明の為、便宜的に「○○……の場面」と表記します。

  • 「母の思い……の場面」(27:20頃)

最も武に隠しておきたかった秘密、もはや隠しようのない状況となった事を知った母親、呆けてしまったような表情。
大変短い曲ですが、どこか儚げで切なげな雰囲気の楽曲は、物語の終局が近いことを教えるかのようです。

  • 「10年前の出来事……の場面」(29:45頃)

竹内老人のナレーションで語られる10年前の殺人事件の顛末。
木琴のような音でポツポツと、淡々と奏でられる楽曲は、ここで語られる古代から続く一族の血と、それに関係して実行された殺人事件のあらましと合わせて考えると狂気的な印象すら与えます。人間の業(カルマ)を表すかのような曲です。そして迎える母の死。武はある決意をします。

  • 「宿命……の場面」(32:55頃)

母親の衣服を借りて菊池一族の長に近づく武。女装して熊襲(クマソ)を打ち倒したヤマトタケルそのままに、自らの因縁に決着をつけることになります。
一瞬効果音も全く無い状況から一転して突如流れる曲は非常に印象的、且つ宿命的、そして絶望的な響きでもあります。

  • 「神話解釈……の場面」(36:20頃)

最後、幾つか残った全ての謎を竹内老人が菊池一族の生き残り・隼人に語って聞かせます。
古代の祭儀の太鼓のような音が怪しく響きます。洪水の如く膨大な量の情報が語られ、そのバックに流れ続けます。

  • 弥勒……の場面」(45:30頃)

武が最後に負う事になる宿命を表現する曲です。世界に残されたのはたった一人自分のみという寂しさ・切なさ、そして帰ること叶わぬ己が運命……といった情感の曲が哀しいです。神秘的な星空と共に画面・楽曲はフェードアウトしていきます。五十六億七千万年後の全人類大往生を夢見て……。

  • エンディング(47:00頃)

前編と同じエンディング曲です。ただし全編通して作品鑑賞後に再聴すると、また感慨もひとしおです。まるでモザイクのように形作られた物語の、様々な断片の記憶が頭をよぎります。はっきり言って名曲です。


この原作漫画を初めて読んだのは、随分遅く92年頃でした。発表から既に20年近く経っていました。それでも読んだ当時、相当衝撃的だった事を覚えています。以来日本神話にハマり、自分で宇佐神宮出雲大社を見に行ったりもしてしまいました。それだけに「本作がアニメ化されている」と聞いた時には随分不安だったのを覚えています。
あの壮大なイメージを忠実に再現してくれているのだろうか……と。
実際それは杞憂でした。映像にしても、役者さんの演技にしても、奇をてらうでなく、しっかりとそして淡々と原作の持ち味を再現してくれていました。
川井さんの音楽は、とくに太古の怪しい儀式的な曲や各シーンの状況に寄り添った曲などで、原作のイメージを音楽的に再現してくれていると思います。
本作品VHSとLDのみでの発売でDVD化はされていませんが、Amazonで中古VHSが扱われております。もし未見の方がおられましたら是非一度ご鑑賞頂きたい作品と思います。