オススメの作品『機動警察パトレイバー劇場版』
【作曲家・川井憲次の楽曲について、色々語ってみるブログ/第6回】
たか厨です。
……その伏兵とは、89年の夏にひっそりと公開された『機動警察パトレイバー劇場版』だった。
「まぁ劇場用映画だし、一応、映画館で観ておくか」ぐらいの軽い気持ちで、大して期待もせずに新宿のひなびた映画館に足を運んだ。
と・こ・ろ・が。
予想に反して、べらぼうに面白い映画になっていて驚いた。徹底した娯楽映画になっていて、なおかつ深遠な都市論が展開されているという……。しかも音楽がとにかく印象的な仕上がりで、「これがビデオ版と同じ人の作曲か(失礼!)」と更に驚かされた。
まず冒頭の帆場の投身シーンにかかる『夏の嘲笑』のガムランっぽい摩訶不思議な響きに、一気に作品世界に引き込まれた。
続く暴走レイバーと自衛隊の交戦を描いた一連のシーンを彩る『へヴィ・アーマー』の映像との完璧なシンクロぶりに驚嘆した。「暴走レイバーのコクピットが実は無人であった……」という意外な事実が示され、直後、メイン・タイトルが出て、曲が一気に盛り上がって終焉を迎える頃には、もう鳥肌が立っていた。
松井刑事が、帆場の足取りを追い、都内を延々と彷徨するシーンにかかる『虚影の街』では、けだるい夏の残照すら感じさせられた。
そして全ての事件が終わり、台風一過、軽快なED曲『朝陽の中へ』が流れ出すや、それまで強いられてきた心地良い緊張感から解き放たれ、爽快な気分を感じながら、私は映画館の座席に身を沈めることが出来たのだった。
「いいもん、観させてもらったし、聴かせてもらったわ」
というスタッフへの感謝の念と共に。
という訳で『機動警察パトレイバー劇場版』が、作曲家・川井憲次の名を、私の中へ明確に刻み込んだ一本でしたということで……。サントラ盤はアルバムとしての完成度も高いし、初心者の方でも入りやすい一枚だと思う。
尚、サントラ盤は、
・『PATOLABOR Vol.5"INQUEST"』〜89年公開時の楽曲を収録したオリジナル版。
・『1999・PATOLABOR the Movie "SOUND RENEWAL"』〜98年、DVD化にあたって5.1chにサウンド・リニューアルされた際に再演奏された(オリジナルではシンセサイザーだったパートを生楽器に変更)楽曲を集めた版。
の2種類があるので、聴き比べてみるのも面白いかと。