ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

作品紹介『劇場版 薄桜鬼 第二章 士魂蒼穹』

たか厨@けんじけんです。司馬遼太郎先生の『燃えよ剣』を読み、北海道をバイクで旅行した時には、函館の土方歳三のお墓(と言っても遺骨は入ってないんですが)を参った程度には、新選組に関心があったりする身の上でございます。
以上の前振りで、お察しの方もいるでしょうが、今回のお題は、現在公開中の映画『劇場版 薄桜鬼 第二章 士魂蒼穹』です。

原作:オトメイトアイディアファクトリーデザインファクトリー
監督:ヤマサキオサム
脚本:藤澤経清、ヤマサキオサム
キャラクター原案:カズキヨネ
キャラクター・デザイン:中島敦子
音響監督:ヤマサキオサム
音楽プロデューサー:西村潤
キャスト:桑島法子三木眞一郎森久保祥太郎鳥海浩輔吉野裕行ほか
公開日:2014年3月8日

前作の音楽についてはこちらに書きましたので、興味のある方は、ご覧ください。

今回、ネタバレには注意したつもりですが、どこまでがネタバレかという線引きは人それぞれです。本作を未見の方は、覚悟完了の上、お読みください。
さて。
本作は、前作であれだけ華々しく活躍した新選組の主要人物たちが、時代の激流に抗するべくもなく、次々と退場していくストーリーとなっています。
川井さんが本作のために書いた音楽は、筆者の数えた限りでは18〜19曲です。曲数を断言できないのは、一番最後に流れるピアノ曲が、デワヨシアキ氏作曲による主題歌の前奏部なのか、主題歌にスムーズに橋渡しできるように、川井さんが作った曲なのか、筆者には判別できなかったからです。川井ファン失格ですね!!(苦笑) 答え合わせは、いずれ発売されるであろう本作の映像ソフトの初回限定版に付属するはずのサントラ盤にて。
閑話休題
パンフレットで、川井さんは本作の音楽について「(前作より悲惨なシーンが多いので)悲しみとか絶望の曲が多い」と語られています。その言葉通り、確かに本作の音楽は悲壮美に満ちているというか、悲しみが結晶化したような色合いの曲が、多かったです。

その悲しみの表現に、今回大きく貢献していたのは美野春樹氏によるピアノですね。 
本作の冒頭、千鶴の回想での彼女と土方との会話シーンには、甘く悲しいピアノの音が流れ、ピアノスキーの筆者としては、のっけから心を鷲掴みにされました。
その後は、病床で血を吐く、悲愴な沖田のシーン、近藤との永訣(えいけつ)のシーン、羅刹として命を削り、戦う土方のシーン、千鶴が手紙で土方から別れを告げられるシーン、ある里が滅びるシーン、ある新選組隊士の死の報が、仲間に伝えられるシーン、ある隊士が戦いで散華するシーンで、ピアノの奏でる、繊細で哀愁のこもったメロディが、画面に悲しみの色を添えていました。
ピアノが加わりながら、悲しくない曲というと、原田が千鶴に「土方さんに付いて行け」と彼女の決心を後押しするシーンに使われた曲と、前述したラストに流れる、謎の(苦笑)曲ぐらいですかね。それ以外のピアノ曲は全て、悲しみに満ちていました。

ピアノ以外の楽器に触れると、モンゴルの民族楽器である馬頭琴(=モリンフール)は今回も目立っていました。特に本作の伝奇的要素である鬼について語られるシーンでは、馬頭琴の特徴的な弦の音が、古い歴史を持つ鬼の一族の神秘性を醸し出すのに、抜群の親和性を示していました。

フルートも要所要所で使われ、画面を引き締めていました。特にラストの方で流れるフルートは、前作の土方の初登場シーンに、やはりフルートの音が使われていたことを、きちんと踏まえた上での使用で、聴いていて胸が熱くなりました。「京都から始まった、この物語も函館の地で、遂に終わるのか」と。

コーラスは、人を捨てて羅刹となった新選組隊士たちの鬼神の如き激闘のシーンに、主に使われていました。荘厳な合唱は、彼らが命を燃やす様を讃え、時には哀れんでいるかのようにすら聞こえました。

本作は京都だけを舞台にした前作と違い、新選組が北へ北へと敗走していく姿を追った映画であります。場面転換が多く、登場人物たちの思惑もそれぞれで、前作に比べると、かなり慌ただしい印象は否めません。それでも一本筋が通っているのは、やはり川井さんの緩急自在の音楽があったればこそだったと筆者には感じられました。
是非、劇場の大画面と音響で味わって頂きたい作品です。
新選組の生き様、ヒロイン・千鶴の選択を見届けてあげてください。