ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

オススメの曲『泰然自若 -Take thing easy-』(『イップ・マン 序章』より)

たか厨@けんじけんです。

詠春拳の達人で、ブルース・リーが門下生にいたことでも知られる、実在の武闘家・葉問(イップ・マン)の生涯を描く映画『葉問』シリーズの最新作『葉問3:師徒情』が、昨年12月24日より香港で封切られました。
音楽は一作目から担当している川井さんが続投。しかし残念ながら『葉問3』の現時点での日本公開は未定の模様です。

というわけで『葉問3』の日本公開とサントラ発売を祈願して、今回はシリーズの原点である第一作『イップ・マン 序章』('08)から、筆者のお気に入りの一曲を取り上げたいと思います。


『泰然自若 -Take thing easy-』

葉問の屋敷を訪れた拳法家・金山找と葉問の対決シーンに流れた4分18秒の曲です。打楽器とリフレインされるメロディ、アクセントで入るコーラスが印象的なバトル曲です。
戦いの前半は室内の家具が壊れ、奥さんに怒られるのを恐れた(苦笑)葉問が、金の打撃を見事に防御しつつも積極的に攻めにいかず、膠着状態に……。
そこへ突如、三輪車を漕ぎながら、葉問の息子が二人の間に割って入るや、トテテントテテン……とコミカルに曲調が変わります。例えればチャルメラのメロディを思わせる感じに。川井さんの茶目っ気が感じられます。映像を観てから作曲しているフィルムスコアリングの妙ですね。
息子が「パパが反撃しないと物が壊れる(だから反撃しろ)」という母の言葉を伝えるや、葉問が本格的に攻勢をかけます。曲はメインタイトルでも使われたモチーフをかき鳴らしつつも、打ち鳴らされる打楽器が激しさを増し、段々とアップテンポになっていきます。途中、素手の葉問に対し、金が、だまし討ちで剣を振り下ろす場面では、悲鳴のようなコーラスが一瞬流れ、危機感を演出します。決着がつくまで音楽は流れ、変化し続け、そして葉問の圧倒的な勝利を讃えるように、曲調が最高潮に盛り上がったところで、この『泰然自若〜』という曲は終了します。
とにかく中盤の三輪車の乱入が、音楽上でもとてもインパクトがあり、本作を彩る数々のバトル曲の中でも、突出して筆者の印象に残りました。

『お気に入りの一曲』といいながら、もう一曲ご紹介を。
本作の冒頭、腕比べのため、葉問の屋敷を訪ねた泰山武術館の主と葉問が戦いに入る前に、静かにご飯を食べてるだけのシーンに、軽やかで心和む音楽が付けられています。1分ほどの小曲ですが、日頃、「戦闘シーンの曲より、皆がただ食事をしているだけのシーンのための音楽を書きたい」と公言している川井さんの本領が発揮された、隠れた名曲(曲名『融樂 -Harmony-』)ではないでしょうか?(笑)


なお本作のサントラは海外盤のみ発売され、現在は廃盤のため入手困難です。何かの機会に見かけたら、是非とも入手をお勧めします。バトル曲が満載で、聴けば、血中のアドレナリン濃度が確実に上がる『燃える一枚』ですから。