オススメの曲『.50 Woman - shoot』（『KILLERS .50 Woman』より）

レグルス＠関西人です。

今回ご紹介するのはガンアクション短編５作品からなるオムニバス映画『KILLERS／キラーズ』中の押井監督作品『.50 Woman』より、『KILLERS .50 Woman - shoot』です。
『.50 Woman』というタイトル名は「ドットフィフティ　ウーマン」ではなく「ハーフウーマン」と読ませます。50口径の銃と、ニューハーフをかけたネーミングだそうです（予備知識なしに観た人は、主演の方が女性だと思った人もいるとかいないとか）。

これはオススメの曲であり、イコール、オススメの作品といっても過言ではない曲です。それは、押井監督の短編映画ではちょくちょくある、最初から最後まで途切れることなく一つの曲が流れる作品だからです。いわゆる「ベタ付け」というやつですね（厳密には演出上、一部無音の部分があるのですが）。この曲は『KILLERS』サントラと『K-PLEASURES~Kawai Kenji BEST OF MOVIES~CD-BOX』に収録されていますが、私はサントラは未入手なので、オススメ曲もCD-BOX収録版で、ということに(^_^;)　『KILLERS .50 Woman - shoot』はCD-BOX収録版のタイトルで、サントラの曲名は『.50 Woman - shoot』です。
ちなみに、エンディングも間髪を開けず続きますが、別の曲扱いだそうです（曲名は『.50 Woman - eat』）。

押井監督のDVDコメンタリーによれば、劇中のテレビショッピングで流れる曲も川井さんによるものらしいので（言及はありませんが、ワイドショーの曲も？）、なんとこれ、本編よりも劇伴の合計のほうが長時間になるという、極めて特殊な作品なのです。

CD-BOX収録版は容量の都合もあってか、川井さん御自身による編集で6分ほど短くされているのですがそれでも約10分もあります。例によって私のようにぼんやり聴いていると、エンディング部分以外はどこをカットしたのか分からないかも。ビート音だけの部分とか、少し変則的なパーカッションとか、演出上の要請による緩急の、メロディ的要素の少ない部分がカットされているのですが……。しかしこれによって逆に、純粋な１つの曲として、すんなり作品の世界観を追体験できるものになっている気がします。

映画の内容は、東京の真ん中での、スナイパーの陣取りから狙撃までを描いたもの。多少でも軍事・兵器に関心がある人ならお分かりのように、狙撃とは実際に弾を撃つよりもターゲットを待っている時間の方がはるかに長いもの。
本作でも延々と続く待機中、どこかエスニック調にも感じるメロディが繰り返し流れます（だからこそ、どこをカットしたのか分からない、という）。
基本的には待っているだけとはいえ、もちろん川井さんの仕事ですから、時折ある場面の緩急・変化に合わせて曲調が変わることは言うまでもありません。

個人的なポイントはパーカッション。チリリン、という金属っぽいものと、チャララランという木質の２種類の音色が、この曲・この作品ならではの面白い特色を醸し出しています。
オーディオコメンタリーでは、オムニバス中の別の作品の監督が「眠くなるのは川井さんの曲のせい？」なんて声もあるのですが、全くそんなことはありません！
眠くもならないし、ましてや川井さんの曲のせいではありません（注：個人的な感想です）。

押井監督と因縁浅からぬ、「あの」鈴木プロデューサーが狙撃される痛快な（注：個人的な感想です）クライマックスでは、にわかにストリングスが入って来て、盛り上がりは最高潮に。
延々と溜めるだけ溜めておいて、一気に盛り上がる構成は私の大好きなパターン。曲としての構成は『L change the WorLd』の『激走』と似ているといえるかもしれません（もちろん、作品の演出上の要請から来るものですが）。

ただ、もしこれが川井さんでない人の、残念な曲がかかっていたとしたらとイメージすると、評価は全く別物になっていたと思われる低予算っぷりが垣間見えるのも確か。それを感じさせない川井さんの劇伴の凄さが改めて分かると思いました。

ターゲットを待っている間、延々とコンビニのパンやおにぎり、水などを飲み食いして、その商品名等がいちいち画面に表示されるバカバカしさも大好き。個人的には押井監督の実写映画の裏ベスト（表ベストは『Avalon』ですね）ともいえなくもない隠れた佳作だと思いますので、是非とも観て／聴いていただきたい作品です。