ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

作品紹介『らんま1/2 中国寝崑崙大決戦! 掟やぶりの激闘篇!!』

たか厨@けんじけんです。
さて今回のお題は、映画『らんま1/2 中国寝崑崙大決戦! 掟やぶりの激闘篇!!』ですが、その前にひとくさり。

映画史において、幻に終わった映画は枚挙に暇(いとま)がありません。
筆者個人が観たかった幻の映画を挙げると、クランクインしながら撮影中止に追い込まれた黒澤明監督版の『トラトラトラ!』、絵コンテがCパートまでは完成していたという細田守監督版『ハウルの動く城』でしょうか。これらは後日、別の監督の手により完成しましたが、個人的にはムニャムニャ〜な出来で、本来の監督による完成作を観たかったという思いを改めて強くさせられる代物でした。
2000年公開予定だった『G.R.M. THE RECORD OF GARM WAR(ガルム戦記)』(監督:押井守、音楽:川井憲次)も制作中止に追い込まれた1本でした。数多の作品と同じく、そのまま幻と消えるかと思われましたが、この作品は消え去りはしませんでした。『The Last Druid: Garm Wars』(以下『Garm』)と名を変え、復活したのです。更に『Garm』が特筆すべきなのは、前述した作品と異なり、作品が別の監督に委ねられることなく、本来の監督自身の手によって完成に至ったことでしょう。音楽も引き続き川井さんが担当されました……。

 
というわけで、10月25日、けんじけんのメンバー3名で連れ立ち、東京国際映画祭のワールドプレミアで『Garm』を観て参りました。
上映前には押井監督と鵜之澤伸エグゼクティブ・プロデューサーの舞台挨拶がありました。監督が「15年ぶりに完成することができた。諦めずにやってきて良かった」と語った時には、「あの幻だった作品が、遂に陽の目を見るのだ!!」と観客席の筆者も歓喜と期待に打ち震えたものです。
そして目撃したものは……。
えーと何と言いますか。一般公開前の映画について、あまり批判的なことは書くべきではないと思いますので、一言だけ。
「映画の企画にも賞味期限があるんですねー」
以上で、お察し下さい(苦笑)
川井さんの音楽についても、あれこれ語って、これからご覧になる皆様の興を削いでしまうのは不本意ですから「●●さんをスキャットに起用した曲が全編を彩り、作品に風格を与えていました」とだけ。あとは聴いてのお楽しみということで。
『Garm』は来年公開予定です。公開されましたら、あらためて忌憚のない感想をこちらで書かせて頂くかもしれません。その時はよろしくお願いします。
 

それでは本題の映画『らんま1/2 中国寝崑崙大決戦! 掟やぶりの激闘篇!!』について語りましょう。
今回、本作を取り上げたのは、先日、キッズステーションで『らんま1/2』のテレビシリーズのデジタル・リマスター版の放送が始まった記念です。川井さんは第22話『激突! 出前格闘レース』からの参加となっていまして、このエピソードはキッズステーションでは11月25日(火)21時26分よりの放送です。ご覧になれる環境をお持ちの方は是非。

なお、けんじけんブログでは、『らんま1/2』のテレビシリーズ関連では過去に、
 ・オススメの歌『猫飯店メニュー・ソング』(2014-02-10公開)
  http://d.hatena.ne.jp/kenjiken/20140210

 ・墓これ『らんま1/2熱闘音楽編』(2014-01-08公開) 
  http://d.hatena.ne.jp/kenjiken/20140108

 ・オススメの曲 『女嫌香パニック M-14』(らんま1/2 熱闘音楽編)(2011-05-28公開)
  http://d.hatena.ne.jp/kenjiken/20110528
で取り上げています。こちらも、ご一読頂ければ幸いです。


らんま1/2 中国寝崑崙大決戦! 掟やぶりの激闘篇!!』
 原作:高橋留美子 
 監督:井内秀治
 脚本:柳川茂(原案)、井内秀治、山口亮太
 絵コンテ・演出:山本裕介近藤信宏日高政光
 キャラクターデザイン・作画監督中嶋敦子
 美術:新井寅雄
 音響監督:欺波重治
 録音アシスタント:若林和弘
 キャスト:山口勝平林原めぐみ日高のり子玉川紗己子塩沢兼人ほか
 上映時間:75分
 公開日:1991年11月2日


本作のサントラはトータル・タイムが46分47秒で、18曲収録です。収録曲の内、主題歌『IT'S LOVE』(作詞:岩佐友晴、作曲:野下俊哉、編曲・歌:RABBIT)が3分8秒なので、残り43分39秒が、川井さんの作られた楽曲となっています。筆者の確認が間違っていなければ、映画で使用された楽曲はすべて収録されています。
ただし18曲収録となっていますが、1曲1曲でトラックを分けておらず、何曲かをまとめて1トラックとしているアルバムですので、映画で使用された総曲数が18曲というわけではありません。
  
なお故・永井一郎さん演じる八宝斉が、下着ドロをしながら、町内を疾駆する本作の冒頭部を彩った『序曲』につきましてはレグルスさんが執筆されていますので、こちらをご覧下さい。
 ・http://d.hatena.ne.jp/kenjiken/20140713(2014-07-13公開)

本作は、川井さんがテレビシリーズに参加されてから、およそ2年後に公開された『らんま1/2』の劇場版第1作です。
川井さんお得意の中華風のメロディや軽快なアクション曲がギュッと詰まった1作です。らんま一行が中国に上陸したり、劇場版ならではの派手なアクション・シーンが随所にありますので、それに沿った音楽設計といえましょう。
中華風味の曲、アクション曲以外で、本作で筆者が特に印象的だった曲を幾つか挙げてみます。


まずゲストキャラ・七福神の一人、モンロン(声:山田栄子)というキャラクターが琵琶を武器とする使い手で、彼女の活躍シーンには琵琶の音が鳴り響くのが印象的でした(サントラでは『第四楼閣・モンロン』に収録)。琵琶のびょうびょうとした音色が、画面にかなりのインパクトをもたらしていました。琵琶をフィーチャーした曲といえば、後に川井さんが担当された『さくや妖怪伝』('00)にも『琵琶牧々』という曲がありますので、そちらと聴き比べてみるのも一興かもしれません。


七福神の首領・キリン(声:塩沢兼人)が、あかねの奇怪な手料理を口にするか、葛藤する場面に流れたピアノをベースにした緊迫感のある曲も、シチュエーションの馬鹿馬鹿しさと曲のシリアスさが醸し出すギャップが、絶妙で印象に残りました。普通、女の子の手料理を前にした人物に、こんな緊張感に満ちた音楽はつけません(笑)
直後に、実はキリンはご飯と漬け物以外は受け付けない体質で、彼にとって、あかねの手料理を口にするのは、本当に身を賭した行為であったことが明かされるので、この音楽が決して大げさではなかったことが分かりますが(サントラでは『寝崑崙への旅路』の3曲目)。


他に本作で印象的なのは、脱力系の音楽がふんだんに用意されていることでしょうか。特に、あかねがキリンに手料理を初披露するシーンと終盤、キリンの持つ謎の巻物の文面が明かされるシーンとに共通して流れる、『ラジオ体操』のイントロをちょっと連想させるチャーミングなピアノ曲の脱力感と破壊力はサイコーです(サントラでは『大団円』の2曲目)。
映画のラストシーンも「らんま〜」と口ずさめる脱力系の曲で締めくくられています(サントラでは『終曲』に収録)。
川井さんのヘタレた音楽がお好きな向きにもオススメな作品といえましょう。


本作は『らんま1/2』の主要キャラクターが一堂に会す痛快なアクション作に仕上がっています。テレビシリーズを見て、気に入られた方は、どうぞご覧になってみてください。
では再見!!