けんじけんブログ

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

東京藝術大学「川井憲次トークイベント」レポ

D-01です。
今週と来週、二回に分けてレポをお送りします。

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さる3/22、『アニメの音楽 映像作曲家 川井憲次氏を迎えて 映画音楽-研究と創作-』というイベントが東京藝術大学千住キャンパスで行なわれた。
http://www.geidai.ac.jp/labs/alc/anime20120322.html
応募者多数のため抽選になったそうだが、運良く当選したため、たか厨さん、みーらさんとともに参加してきた。
会場には老若男女様々な参加者が。
普段から大学のイベントに参加している層が、その流れで参加した感じ。
これまでの「川井憲次イベント」の参加者とは、ちょっと違う雰囲気だ。


時間になり、ゲストが登壇。
観客席から見て、スクリーンを挟み、左に川井憲次師匠、右に石井朋彦氏(映画プロデューサー)、右端に司会の教授が並ぶ。


(以下、たか厨さんのメモと、自分の記憶を統合して抜粋。読みやすいようにまとめるため、多少言い回しは変えてある場合もあります)


司会「川井さんは子どもの頃、どんなことをしていましたか?」
川井「普通に近所の子と野球をしたり。あとは、よくモノを分解したりしていました」
司会「川井さん自身の音楽の原点は?」
川井「身体が弱かったので、よく病床で父のカセットテープを聴いていました。そこに映画『ムーランルージュ(邦題:『赤い風車』1953年公開)』の曲が入っていて。繰り返し聴いていましたね。あとは森山良子の『さとうきび畑』を聴いて景色を想像し、その景色を探して電車で出掛けたり。まぁ、お小遣いで行ける範囲の距離ですが。一番好きな作曲家はバート・バカラック。日本のアーティストだとユーミンが好きでしたね」
司会「ユーミンに影響を受けた方、多いですよね。あの時代の歌は、メロディが印象的な曲が多かったと思います。ちなみに音楽以外の趣味はありますか?」
川井「ほとんど無趣味なんです。でも最近は山登りを少し。まぁ、半分以上は車で登れて、山頂には山小屋があって、そこでビールを飲んで、帰りにふもとの温泉に入る、というような」
司会「それ、山登りとは言いませんよ(笑)」
川井「ですよね(笑)」


司会「では作曲の仕事に就いた経緯など。バンドとか、やってらしたんですか?」
川井「はい」
司会「やはりロックですか?」
川井「いえ、フュージョンインストバンドです。そのバンドで、あるコンテスト(第1回MAZDAカレッジサウンドフェスティバル)に参加したところ、優勝してしまいまして。その後はスタジオミュージシャンでやっていこうと思ったんですが、あの仕事は譜面を見てその場で弾けないとダメなんです。僕はそれが苦手だったので、“なら譜面を作る方になればいいじゃないか”と思いまして。24、5歳の頃にCMの曲を作ったのが最初だったと思います。たぶん」
司会「その後、押井守監督の『紅い眼鏡』を手掛けることになるわけですが、これはどういった経緯で?」
川井「あれは、もともと声優の千葉繁さんのプロモーション映画という企画だったので、あまり予算がなくて。“自宅に録音機材のある川井なら安く仕上げられるぞ”ということで選ばれたようです」


司会「石井さんに伺います。映画のプロデュースとは、どういう仕事なのでしょうか?」
石井「流れとしては、まず“どういうものを作るか”という企画の段階。次が“制作の段階”です。アニメの場合、絵を描いたり、音楽のポストプロダクションなどですね。実写の場合は役者に頼るところが大きいのですが、アニメはスタッフが重要。ゼロから1を生み出すのがアニメなんです。川井さんと仕事をする場合は、企画の段階から絡んでもらうことが多いです」
司会「監督と作曲家の間に入る音響監督という立場の方がいますが、これはどういう役割を?」
石井「アニメの監督って、意思を言語化するのが苦手な方が多いんですよ。だから音響監督が間に入って、作曲家へ通訳するという感じです。音楽メニューを書いて、作曲家に発注するわけです。アニメの場合はアフレコにおいて役者へ指示を出したりします。フィルムに声や音を乗せるときに客観的に見られる人、という位置づけですね。
また、最近は音響監督を立てない監督さんも増えてきています。私がプロデュースを務める『009 RE:CYBORG』の神山健治監督も、本作からは川井さんと直接打ち合わせをしています」
(自分の隣に座るみーらさんが、音響監督が若林さんでないことを聞いてショックを受けた模様)
石井「アニメにおいて音は重要な役割を担っています。押井監督も“映画の半分は音楽だ”と言っているくらいです。試しに音を消してアニメを見てみてください。30秒も見ていられないと思います」


司会「では、ここでスクリーンをご覧ください」
石井「これは私がプロデュースした『東のエデン』という作品の絵コンテです。どういう場所でどんな演技をするかという指示書ですね。
川井さんは普段、重厚な雰囲気の曲が多いのですが、『東のエデン』では今までやっていたのと違う曲が欲しいと思いました。まさにバカラックのような」


司会「テレビと映画では音楽の作り方は違いますか?」
川井「映画は映像が完成してから、どこに曲を付けるか決まった発注が来ます。(画面の映像を見ながら)これが時間、分、フレームを示しています。映画はフレーム単位で曲を合わせて作ります。アクションやホラーではとくにタイミングが重要です。考えてみてください、ホラーで“あっ!”と驚いた場面から遅れて“ババーン”と曲が来たらシラケるでしょう?」


(来週につづく)