ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』

公開日:2010年12月23日
監督・脚本:アベユーイチ
VFXプロデューサー:クワハラマサシ
音楽プロデューサー:田靡秀樹
出演:小柳友濱田龍臣、土屋太鳳、平泉成ほか
声の出演:宮野真守緑川光関智一神谷浩史宮迫博之雨上がり決死隊)ほか
上映時間:100分

 たか厨@けんじけんです。
 今回はチャンネルNECOで3月の3、18、20、31日に放送される『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』を取り上げます。
 本作は『ウルトラマンシリーズ45周年記念作品』第一作として制作された劇場用映画で、川井さんの劇場版ウルトラマンへの初参加作品です。


【本作の予告編】


 前作にあたる『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(09年)』はマイケル・バータという謎の(苦笑)外国人作曲家が登板していましたが、川井さんは前作の音楽を踏襲することはなく、本作で引き続き登場のウルトラマンゼロウルトラマンベリアルたちに新たな曲想によるテーマ曲を書き下ろしています。
 
 サントラのライナーによれば、本作の監督・脚本を務めたアベユーイチ氏の「何としてでも川井さんしかないんです!」という熱望により、一度は作曲依頼を固辞した川井さんの参加が実現したとのことです。
 アベユーイチ監督は、川井さんのウルトラシリーズ初参加作である『ウルトラマンネクサス』の演出陣として、阿部雄一名義で七本(含・最終三話)のエピソードを監督した経歴の持ち主。『ネクサス』の音楽を大変気に入っており、「様々なキャラクターの気持ちが入り乱れる群像劇である本作でも、中核となる、しっかりとしたゼロのテーマ曲を川井さんならば作ってくれる」と直感し、指名したそうです。

 ところで本作の音楽について語る際、避けて通れないのは「川井さんは作曲のみで編曲は別人が担当」という事実でしょう。これは本作の音楽制作スケジュールと川井さんのオーブ・スタジオの改装工事がぶつかったのが原因でした。
 通常の映画音楽の制作の手順ならば、川井さんは映像に合わせて作曲、アレンジ、ミックス、録音まで手掛けます。ところがスタジオが使えない為、本作では川井さんは脚本レベルの情報のみで7曲を作曲して、後は編曲を他者(原文雄氏、藤澤慶昌氏)に委ねるという形での関与になったとのこと。
 ビデオアニメ作品では、田中公平氏が編曲を担当することが前提で作曲された『A-Ko THE VS/BATTLE1〜GRAY SIDE』というアルバムが川井ファンなら脳裏に浮かびますが、「映画音楽で楽曲のみ提供」という本作は川井さんも初めての経験だったそうです。

 さてその結果はと言えば、けんじけん内では賛否両論あります。
 「川井節」の何たるかが、実は今でもよく分かっていない(苦笑)筆者などは特に抵抗もなく聴けるのですが、「川井節」がDNAレベルで刷り込まれたメンバーには隔靴掻痒(かっかそうよう)の音楽ということになるそうです。いわく「なんというか音が違う」「川井節がかなり薄れてしまっている」など。
 まぁ筆者には分かるような、分からないような……。

 筆者が一番お気に入りの曲は、女性コーラスが暗く重くささやく『ベリアル銀河帝国 戦慄のテーマ』です。ベリアル帝国軍の侵攻や脅威を表現した曲で、このテーマは形を変えながら、本作の随所で流れました。
 ミラーナイト初登場のシーンにかかる『ミラーナイト登場』は、イントロが『ミラーマンの唄(作曲:冬木透)』からの引用なのが、往年のファンには嬉しい配慮でしたが、これは多分、川井さんではなく、編曲の藤澤氏の仕事じゃないかな〜と思います。
 ゼロのテーマも躍動感があって、チンピラ(笑)……もとい若き世代のウルトラマンであるゼロをよく表現した曲に仕上がっています。余談ですが、この川井版ゼロのテーマは、本作の後日談として製作されたDVDオリジナル作品『ウルトラマンゼロ外伝 キラー ザ ビートスター』(音楽:原文雄)に流用されています。


【『ウルトラマンゼロ外伝 キラー ザ ビートスター』予告編】


 編曲の問題に戻りますと、日本の映画音楽では作曲者が編曲まで担当する例が多いですが、ハリウッドでは一定の予算以上の作品なら、編曲家が別にいるのが一般的ですね。
 洋画のエンドロールをよ〜く観ていると、大抵「オーケストレーション:誰それ」と作曲家とは別の人がクレジットされています。
 筆者の大好きな映画音楽作曲家で、あらゆるジャンルの作品を手掛けたという点では川井さんと共通点もあるジェーリー・ゴールドスミス(代表作『オーメン』『パットン大戦車軍団』『エイリアン』『氷の微笑』など)も、数十年来、アーサー・モートンとアレクサンダー・カレッジ(テレビドラマ『宇宙大作戦』のテーマの作曲者)の二人を信頼して、編曲は任せていました。
 ゴールドスミスの音楽は金管がとても印象的ですが、となると、その音楽の個性は、確かにこの二人が作っていたと言えましょう。この二人が「ゴールドスミス節」に寄与していたのは明らかですね。

 川井さんが自身で編曲まで担当されるのは、川井さんの曲想が徹底されるという意味では歓迎すべきなんでしょうが、「もしゴールドスミスみたいに信頼できる編曲家がいるなら、任せちゃってもいいんじゃないかな」と考えないこともないですね。作曲に専念出来る分、担当作品数は増えますよん……って、今でも川井さんは十分な数の作品を毎年送り出しているんですけどね(苦笑)
 
 では、もし川井さんが編曲まで手掛けていたら、ゼロたちを彩る音楽はどんな音色を響かせていたのか?……それは『ウルトラマンシリーズ45周年記念作品』第二作で3月24日に公開の『ウルトラマンサーガ』において解明されるかも……と期待していたのですが、発表された音楽担当者の名前は川井さんではありませんでした(泣)
 今はただ、ウルトラの星が再び川井さんのメロディと編曲を必要とする日が来ることを待つばかりです。