映画Talking Headより『遺留品No.01』
【作曲家・川井憲次の楽曲について、色々語ってみるブログ/第56回】
お久しぶりです、SS@けんじけんです。今回は前回に引き続いて川井憲次三大ピアノソナタ*1の一つ、映画『Talking Head』より『遺留品No.01』を紹介します。
この映画のオリジナル版サウンドトラックはかなりの希少盤なのですが、2003年にCDBOX『Cinema Anthology』が発売されたことで今はある程度普及してます。『遺留品No1』はこのCDBOXの1枚『Cat Nights』で聴くことができますが、一方オリジナル版にはCDBOX版にはないドラマCD『ゲーデルを夢見て』が付属しており、そのために今も市場価格は高止まりしていたりします。
ドラマCDの内容や市場価格は本題ではないのでさておき、注目すべきはそのドラマCDの中で『遺留品No.1』の別取りが聴けることです。もっとも編曲や楽器構成などがあからさまに違っているということはなく、単にドラマCD版のピアノ演奏者がプロの方であるのに対してCDBOX版は作曲者である川井さん自身による演奏という差でしかありません。
にもかかわらず、前者が譜面どおりの正確無比な演奏をしているのに対して、後者はあたかも即興でかき鳴らしたかのような気ままさがあります。結果、前者は演奏の几帳面さと曲調とのギャップが不思議な印象を与えるの対して、後者は自然体でマイナーコードの曲にもかかわらずどこか穏やかな雰囲気なのです。演奏者によって曲の印象が変わるという音楽の奥深さを体験できる一曲なのでした。
なお、冒頭で述べたとおりこの音源が収録されているCDはどちらもわりと入手困難なので、一番簡単な試聴方法としては映画のDVDから本編の劇中曲(プロの方の演奏)とDVDメニュー画面でのBGM(川井さん演奏)とを聞き比べることでしょう。