ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

『GANTZ』公開記念〜『修羅雪姫』

【作曲家・川井憲次の楽曲について、色々語ってみるブログ/第45回】

修羅雪姫
2001年12月15日公開
原作:小池一夫上村一夫
監督:佐藤信
脚本:佐藤信介、国井桂
特技監督樋口真嗣
アクション監督:ドニー・イェン
音楽プロデューサー:慶田次徳
出演:釈由美子伊藤英明佐野史郎真木よう子沼田曜一嶋田久作 ほか

 たか厨@けんじけんです。
 今回取り上げるのは、本日1月29日公開の『GANTZ』の佐藤信介監督が、川井さんと初めてコンビを組んだ映画『修羅雪姫』です。
 佐藤監督は以前からの川井ファンで『精霊のささやき('87)』のテーマ曲が本作の為に、新たに録音されたのも監督のたっての希望によるものとのことです。
 
 まず作品の世界観がナレーションと字幕で語られた後、太鼓の連打と共に本編が幕を開けるや、繰り広げられる壮絶なアクションに、筆者は心奪われました。それ以降も戦闘シーンが佳境に入ると鳴り響く太鼓の響きに、いやが応でも血中アドレナリン濃度が急上昇しました。
 本作では、アクション監督ドニー・イェンの作り上げた、畳み掛ける様な剣戟・格闘アクションと川井さんの音楽が初顔合わせを果たし、両者の相性の良さを証明したのも特筆に値すると思います(この後、ドニーの関わった川井作品は『セブンソード('05)』、『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート('06)』、『イップ・マン 序章('08)』、そして現在公開中の『イップ・マン 葉問('10)』と続きます)。
 本作の音楽は大別すると、戦闘関連の曲と、暗殺者・雪(釈由美子)と彼女が身を寄せる青年・隆(伊藤英明)との触れ合いを表現した曲に分けられます。最初はぎこちなかった二人の関係が、徐々に深まっていく様子を『雪と隆1&2』と『精霊のささやき』のピアノの調べが優しく見守ります。

 92分の本作に対し、用意された音楽は60分。本編の2/3に音楽が流れています。終盤は音楽の流れていないシーンの方が少ない位です。一曲が複数のシーンをまたがって流れることが多く、場面場面に合わせて強く激しく、時には静かに哀しく奏でられる音楽には、川井さんのフィルム・スコアリングの妙技を存分に味わえます。
 音楽的に惜しむらくは、エンドロールに流れるのが、川井さんの曲ではなく、本編の内容に全くそぐわないJポップだったことでしょうか。

 少し音楽と関係のない話をします。
 雪の生き様を描く本筋とは別個に、隆の反政府組織絡みのエピソードが並行して描かれますが、これは本筋と結局、合流しないまま終わりを迎えます。これを以て本作を批判する向きもありますが、筆者は合流しない処が、逆に新鮮に感じられましたので評価しています。鬼神の如き強さの雪でも、運命に対しては無力であるという無常感も出ていましたし。初期段階の脚本では、【ネタバレの為、文字反転】隆が殺された直後に、雪が駆け付け、手を下した城所(佐野史郎)を殺害。その後、ガソリンスタンドでもある隆の家が大爆発。その炎に照らされて、雪を追う建御雷家の刺客達が現れる……という構成だったそうです。だから決定稿で本筋と合流しないのは確信犯ですね。
 噂のあった続編が、もし作られていたら、隆のエピソードの決着をつける為に、戦う雪が見られたのかもしれません。その復讐行に、川井さんがどんな音楽を付けたか、想像してみるのも楽しいですね。
 
 DVDの佐藤監督、樋口特技監督一瀬隆重プロデューサーによるオーディオ・コメンタリーによれば、
・雪が白いドレスを着て、湖にただずむシーンに流れる口笛(サントラ未収録)は、川井さん自身の口笛。
・曲が長くて、徹夜が続き、川井さんはヘロヘロに。栄養ドリンクが欠かせなくなっていた。監督が「曲のここをやり直して下さい」と頼むと、絶望的な顔をした(笑)。
 とのこと。
 川井さんがヘロヘロになり、時には絶望しながらも(笑)作り上げた、燃える&泣ける音楽の数々を堪能して下さい。
 そして佐藤監督とは9年ぶりのコンビ作となる『GANTZ』で、川井ファンである監督はどの様な音楽を依頼したのか、川井さんがそのオーダーにどう応えたのか、是非、皆さんもスクリーンで確かめてくだちい。


 さてここからは音楽とは関係ない個人的なお話。
 筆者が本作を初めて観たのは、川井憲次メーリングリスト有志による2001年12月19日の『修羅雪姫』観賞オフ会においてでした。
 「オフ会初参加の人には観賞券進呈(つまりタダ!!)」という餌に食いつきました(苦笑)。
 現在、けんじけんの中核メンバーになっている人たちと初めて出会ったのが、このオフ会でした。
 以来、ご縁が続き、けんじけんの結成に立ち会い、ここでこうして文章を書いているのですから「縁は異なもの、味なもの」と言いましょうか。あれから、もう9年ですか。早いものです。
 もしもこれから、けんじけんのオフ会の告知を見つけることがありましたら、皆さんも気軽に参加してみて下さい。
 人生変わったりするかもよ。

※サントラはアイラヴィスタから発売されていました。時折、ヤフオクに出品されていることがあります。川井さんのベスト盤『K-PLEASURE2』に『序曲』のみですが、収録されています。