ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

【オススメの作品『美しき野獣』】

【作曲家・川井憲次の楽曲について、色々語ってみるブログ/第30回】

  2006年2月11日公開
  監督・脚本:キム・ソンス
  音楽プロデューサー:佐久間雅一
  出演:クォン・サンウ、ユ・ジテ、ソン・ビョンホ、カン・ソンジン

  
  たか厨@けんじけんです。
  今回ご紹介する『美しき野獣』は、『南極日誌』に続く川井さんの韓国映画進出第二弾です。
  タイトルロールになっている主人公の刑事チャン・ドヨン(クオン・サンウ)は暑苦しいまでに熱過ぎる(苦笑)熱血漢です。野獣刑事ではありますが、あまり美しくはありません(ヲイ)。


  川井さんの『警察もの』と言えば『機動警察パトレイバー』『はいぱーぽりす』『逮捕しちゃうぞ the MOVIE』『科捜研の女』など数々ありますが、「主人公が男性で、刑事」という警察ものの王道的な作品は、意外や本作が初めてではないでしょうか?(『紅い眼鏡』『ケルベロス〜地獄の番犬』は特殊警察に属する男性が主人公ですが、両作は『警察もの』と呼ぶには、いささか傾向が違う変化球的な作品だと思います)。


  ストーリーは、運命的に出会った、野獣の如き武闘派刑事チャンと冷静なインテリ検事のオ・ジヌ(ユ・ジテ)のコンビが、暴力組織の首魁に立ち向かうというものです。
 痛快なバディ(相棒)ムービーとか、二人のユーモアとウイットに富んだ会話とか、緻密な知能戦等は期待してはいけません。そういう映画ではありません。敵の親玉の方が頭が良く、先手先手を打ってくるのに対し、チャン刑事が感情をむき出しにしながら行動し、事態をどんどん悪化させる映画です。”エリート・コースを歩んできた検事が、後先考えずに行動する暴れん坊刑事と組んじゃったばっかりに、坂道を転げ落ちてゆく悲劇”を描いた「相棒はよくよく考えて選ばなくちゃダメだぞ☆」という教訓に満ちた映画と筆者は捉えています(苦笑)。
 正直に言うと、映画としての出来は並みです。ご覧になられる方は、そこの処はご承知の上でご鑑賞下さい。


 本作の音楽プロデューサー・佐久間氏のサントラへの寄稿文によれば、本作は韓国では2006年1月12日公開なのにも関わらず、川井さんの元に、完全に編集された映像が届いたのは前年の12月中旬(!)。圧倒的に時間が足りない中での作曲作業となったそうです。ですが、作曲期間の短さを感じさせない熱さと厚みのある仕上がりの音楽となっています。

  
 本作で、音楽が一番強烈に印象に残った場面は、映画の後半、チャンと犯人がお茶畑での追跡行の果てに、家畜舎に突入し、地面に倒れ込んで繰り広げる格闘シーンでした。何が印象的かと言うと、二人が乱闘の最中に、互いになすりつけ合うのが、最初、泥かと思ったのですが、粘度からして、どう見ても家畜の「糞」だったことです。
 互いの顔面を糞の山に押し付け合い、窒息死させようとする命がけの戦い……。シリアスなシーンなのにも関わらず、筆者にはコントにしか見えず、笑ってしまいました。この一連のシーンに流れるのが、テンションの高いバトル曲(サントラの17曲目の『The Fight(part3)』)だっただけに、余計、筆者は笑いのつぼを押されてしまい、劇場で笑い声を抑えるのに必死でした。
 まぁだからと言って、コメディ映画じゃありません。このシーンにドリフみたいな曲を付けたら映画がブチ壊しですし、監督の演出意図はあくまでもシリアスな格闘シーンですから、ここに熱いバトル曲をつけた川井さんは全然間違っていません。しかし『映画音楽って難しいなぁ〜』と筆者にはちょっと考えさせられる一場面でした。


 映画の冒頭からそこはかとなく漂う悲愴感が、音楽全体にも通底していると思います。それでいながら、尚、疾走感あふれるアクション曲あり、ジャズの歌曲あり、メロウなピアノ曲ありと音楽的には豊饒な作品となっております。
 映画としては先にも書きましたように微妙な出来なんですが、韓国×刑事ものという題材に、川井さんがどう挑んだか、その眼で、その耳で確かめてみて下さい。

↓予告編です。