ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

【オススメの作品『カオス』】

【作曲家・川井憲次の楽曲について、色々語ってみるブログ/第20回】

2000年10月21日公開
監督:中田秀夫
原作:歌野晶午
脚本:斎藤久志
出演:中谷美紀萩原聖人光石研國村隼

 たか厨@けんじけんです。
 今回ご紹介する『カオス』は、『リング』1&2、『ガラスの脳』に続く中田監督と川井さんのコンビ4作目です。
 筆者は行けませんでしたが、2007年5月から、シネマバー ザ・グリソムギャングで3週に渡って行われた「中田秀夫監督特集」の際に、川井さんを招いてのトークショー付きの上映作品として選ばれたのが、コンビ作では一番の有名作 『リング』ではなく、本作だったことも納得の完成度の音楽となっています。
 
 この作品に関しては、筆者は映画本編を観る前に、サントラを先に入手して聴きました。
 明確なメロディラインがなく、太鼓がビートを刻む、土俗的というか、呪術的な重苦しい音楽の連続に「どういう内容の映画?」と少々、戸惑ったのを覚えています。
 しかし映像と共に聴くと、この重圧的な音楽が映像と有機的に溶け合い、凡百のサスペンス映画の音楽とは異なる、独特の緊張感と匂い立つような官能性を生み出していました。
 中田監督と川井さんがコンビ作を重ねて、両者に信頼関係が醸成されていたからこその大胆な設計の音楽であり(初顔合わせの作品では出て来ない曲想だと思います)、今では筆者の考える川井作品ベストの五指に入る程のお気に入りとなっています。

 サントラは13曲収録で34分ですが、これが104分の本編に対して作られた、ほぼ全曲です(1曲だけ、小宮山(光石研)が浴槽で××を発見して驚くショック・ブリッジ的な短い曲が収録されていません)。映画の1/3……要所要所にしか音楽が流れない、かなり抑制的な音楽設計になっていると言えましょう。
 その分、一曲一曲が長目で、濃厚です。
 暗く重い太鼓の響きが特徴的で、どんどん混沌さを増していく本編のストーリーを誘導していくかのようです。
 筆者のお気に入りは3曲目の『dress』です。佐織里(中谷美紀)がためらいがちに黒いドレスに着替えるシーンに流れる曲です。太鼓の呪術的な響きは前2曲と変わらないのですが、これに扇情的なシンセサイザーが絡むことで、佐織里の着替えを盗み見ている便利屋・黒田(萩原聖人)の背徳感までをも、浮かびあがらせているように聴こえるのは筆者だけでしょうか。
 サントラを順番に聴いていくと8曲目に当たる『model』が、それまでの収録曲とは打って変わり、明るいビートのきいた曲で、意表を突かれますが、これはモデル撮影の場面で現実音楽として流れている曲だからですね。既成曲を使わず、新規に作曲している点に、中田&川井コンビのこだわりが感じられます。
 サントラの最後は、エンドロール曲である『chaos』で締めくくられます。収録曲のほとんどに通底していた重苦しい太鼓の響きが鳴りを潜めた、明確なメロディラインのある流れるような曲です。それまで観客を捕えていた緊張感から解放されるカタルシスが味わえる曲と言えましょう。
  
 とにかく『これぞ、映画音楽!』という音楽なので、本編を観て、気に入ったら是非、サントラをお買い求め下さい。好き嫌いが分かれそうな曲調ですが、ハマる人はハマると思います。中毒性のある音楽ですから。