ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

映画『28 1/2妄想の巨人』

【作曲家・川井憲次の楽曲その他について、色々語ってみるブログ/第17回】



どうもえすえす@けんじけんです。あらかじめ申し上げますが今回の記事は区分上は「オススメの作品」ですが、別に積極的にオススメはしません。見た後で僕に文句をいわれるのもいやなので、毎度おなじみ「自己責任」でお願いします。




押井監督の実写作品にはいくつか特徴があるが、その一つが役者に極力演技をさせないというものだ。役者が本番撮影で名演技を披露しようものなら、容赦なくシーン全編をカットするらしい。それは予定調和のドラマに収斂し消費される物語の枠組みを超えて、映画そのものを作品のテーマにしているためだろう。


その意味では押井監督が舞台演劇『鉄人28号』を手がけたのは驚くべき意外性があった。役者の演技力に依存した演劇は明らかに今までの押井作品の対極にあるからだ。だが今回の映画『28 1/2 妄想の巨人』でようやくその疑問が氷解する。


「メイキング映像は何故つまらないのか」、


が出発点だったと監督は語るが、そこで本作はメイキング映像を一つの映画にしてしまった。むしろこのメイキング映画こそが主眼であって、舞台『鉄人28号』はそのための素材だったのではないかとさえ思える。案の定というか、(メイキングだから当然ではあるのだが)映画では舞台本編はバッサリ全編カットされている。


そしてタブーともいえるブラックユーモアで、従来のメイキング映像にあるまじき面白さを醸し出している。


まず自らの映画に出演するのは今回が初めてと語る押井監督自身、体を張っている。役者たちの熱の入った通し稽古を頬杖ついて見守る押井監督の姿は完璧に場違いだった。それはまさに「借りてきた猫」ならぬ「迷い込んだ犬(Stray Dog)」そのもので、自分のイメージにこだわるプライドの高い人なら決して観客には見せてはいけない姿だった。


さらに笑えるのが関係者による本音なのか演技なのか判然としない一連のコメントだ。なにしろ石川光久さん、出渕裕さん、神山健治さん、千葉繁さん、西尾鉄也さん、樋口真嗣さん、山寺宏一さんなどなど挙げればきりがないほど多くの押井監督ゆかりの人物が舞台『鉄人28号』を観た感想を語っているのだが、鈴木敏夫さん以外だれもほめていない、という有様だし、その鈴木敏夫さんにしても積年の押井監督との因縁を考えれば言葉通りに受け取るのは眉唾と言わざるを得ない。まさに袋叩きというやつで、最近よく見かける「感動した」、「面白かった」、「○○最高〜!」等々のわざとらしい観客・スタッフの反応を宣伝に使う手法を嘲笑するかのように見える。(川井憲次さんも微妙なコメントをしている。ついでに舞台の曲の流用とはべつにこの映画用に新曲も1曲あったようだ。)


なんという、手のこんだ自虐ネタだろう。きっと舞台『鉄人28号』がスベったのも、この映画のネタための計算ずくの布石だったのかもしれない。