ほぼ隔週刊けんじけん

作曲家:川井憲次に関する最新情報を集めている憲次力研究所(けんじけん)のブログです。

オススメの作品『劇場版Fate/Stay Night Unlimited Blade Works』

【作曲家・川井憲次の楽曲について、色々語ってみるブログ/第3回】

監督:山口祐司
原作:TYPE-MOON
オリジナルシナリオ:奈須きのこ
脚本:佐藤卓哉
音響監督:辻谷耕史
アニメーション制作:スタジオディーン

えすえすと申します。
映画公開から数ヶ月後というCD発売時期の微妙さにもめげずにオススメしたいこの1枚、Fate/UBWサントラ。


前作Fate/A.OSTがセイバールートだったのに対して、本作UBW遠坂凛がメインヒロインの話…が、しかしそれは音楽にはあまり関係ない(作曲者の川井さんもインタビューでそう答えてた。「TYPE-MOONエースvol.4」参照)。
確かに本編BGMにはそれらしい曲はない。(なお本作のED歌曲「Voice -辿りつく場所-」(タイナカサチさん)は明確に凛をイメージしている。)公式サイトのBGMがメインテーマ曲と思われるが、前奏のハープと武侠映画風ドラム(アジア系打楽器か?)と前作A.OST『天地咆哮』に通じるコーラスのコンビネーションが全編に疾走感と迫力を生みだしていてとてもカッコいい。…しかしこれも遠坂凛の象徴とまではいえない。本作にはA.OSTでの悲愴感漂う曲「騎士王の誓い」のようなセイバーのテーマ曲に該当する凛のテーマ曲がないのだ。


これは前作がTV作品であるのに対して本作が劇場作品である点に音楽制作上の意味がある。反復使用と先行制作を基本とするTVサントラと異なり、劇場作品では制作段階から映像にしっかり合わせて1度きり使用される曲が作られるので、1曲ごとの個性をあまり主張せずそのかわりにアルバム単体としてあたかも1つの交響曲のような俯瞰的な構成を持たせるのだ。(映画サントラの構成が本編での使用順になることが多いのもこのため。)
要するに劇場作品である本作では「凛のテーマ」という楽曲はなくともアルバム全体から感じられる清々しさ、勢いのよさ、ちょっとせつない感じといった後味はヒロイン遠坂凛のイメージであるといっていいのではないかと。


ところで、川井さんが書いたライナーには
「〜ほのぼのと藤ねえとみんなで仲良くご飯を食べているだけの映画だったらいいのになあ…と思うのは私だけであろうか。」
とある。戦闘シーン用の激しい楽曲が多いこのアルバムにあって珍しくほのぼのとコミカルな楽曲、「説明希望!」にはそんな締切に追われる作曲者の本音が垣間見える気がする。そういえば前作A.OSTでも『藤ねえのテーマ』はしっかり収録されていた。(しかも2曲も!)。―真のヒロインによる、すべて遠き理想郷=藤ねえルートはサントラの中にあったのか!